今さら聞けない? でも知りたい!フリーデンの豚肉マイスターが教える目からウロコのおいしいお肉の新常識!
第一話 「厚切り豚肉」のおいしい焼き方焼く前に、叩かない。塩・コショウはしない。

いきなりですが、あなたは「すき焼き」、お好きですか?
甘辛く味付けした肉と野菜、豆腐やしらたきなどはまさに、御飯もお酒もすすむ、日本人にとってポピュラーな料理のひとつ。地方によっては、大晦日や元旦に食べる風習もあるそうですが、今も昔も食卓をにぎわせてくれるごちそうの代表格といえます。
そんな、日本人なら誰でも馴染みのある「すき焼き」ですが、料理屋さんや旅先の旅館などで「あれ? うちのと違う!」と、その調理法の違いに驚いたことは、ありませんか?


すき焼き誕生の地といわれる関西を中心に、専門店などでは、まず鉄鍋に牛脂をひいて牛肉を焼き、砂糖としょう油で味付けしたら、肉だけを先に味わうスタイルが一般的です。そして肉を焼き終えてから、肉汁のしみ出た鍋に野菜や豆腐などを投入します。
一方関東では開港当時の横浜で流行った「牛鍋」が原点になったせいか、だし汁、しょう油・砂糖・みりん・酒を調合した割り下で肉、野菜、豆腐等を一緒に煮るスタイルが主流です。
どちらも、おいしいのですが、「肉本来の旨みを味わう」という点においては、前者の「焼く」ほうに軍配が上がるのでは、と個人的には思います。


前置きが長くなりましたが、おいしく料理し食べるためには、五感だけでなく知識も必要……というわけで、今回のお題は、肉を最もシンプルに焼く「厚切り豚肉のステーキ」について。
これまでの概念を覆す新常識「お肉をおいしく焼くコツ」をお教えします!

肉を常温に戻す
冷蔵庫から出したばかりの肉は、熱したフライパンで焼いても肉の中心は冷たいため、火が適度に入らず、それを無理矢理加熱すると表面が焦げたり、肉汁が流れ出てしまいパサパサになってしまう原因に。冷蔵庫からあらかじめ取り出し、肉の温度を10℃程度の常温に戻す事で、フライパンの熱が、均等に肉の内部まで伝わります。表面は香ばしく、中はしっとりジューシーに焼き上げるための大切な下準備です。

おいしい肉は、叩かない
肉をやわらかく調理する下ごしらえとして、一般的に「肉を叩く」という方法があります。しかし、実際には叩くことで組織が壊れ、肉の旨味である肉汁が出てしまうので、肉は叩かないこと。プロが成形のため下処理をするのは、千差万別である肉の状態を見極め、その状態に合った処理ができるからこその技です。
ちまたには“肉をやわらかくする方法”といって、他にもさまざまなアイデアが紹介されていますが、それらは肉質の固い肉をやわらかくするための方法なので、やまと豚をはじめ、質の高い肉には必要ないといえます。

肉が柔らかいのは、適度な水分を保っているからこそ。焼く前に塩をふっておくと、浸透圧で旨味を含む水分が流れ出てしまいます。
塩は、そもそも食べた時に塩気を感じるための調味と考えれば、最後に塩をふる方が合理的。また、素材そのものが新鮮であれれば、保存や臭みを消すためのコショウは不要で、仕上げ時の香り付けと考えます。

植物性の油は、肉の表面をコーティングする効果がありますが、強火で熱したフライパンで一気に肉の表面を焼き上げれば、肉がフライパンにこびりついてしまうことはありません。ポイントは、フライパンの温度。まず強火でフライパンの表面から煙が出始めるくらいまで熱してから肉を焼き、表面に焼き色をつけること。植物性の油をひいて焼くより、肉そのものの脂で焼いた方がコクのある味に仕上がります。

肉の片面に香ばしい焼き色が付いたら、もう片面も同様に香ばしい焼き色をつけます。肉の厚さや火力にもよりますが、片面2~3分が目安です。肉の脂分が出てきたら、その脂分を利用して強火で一機にカリッと焼き上げるのがポイント。その後で、お好みで塩・コショウをします。やまと豚の厚切り肉でしたら、表面にしっかり塩をふれば、塩のみでも驚くほどおいしく食べられます。
表面を焼き上げたら、弱火にしてじっくり中まで火を通してジューシーに仕上げます。

豚肉マイスター直伝厚切り豚肉のおいしい焼き方
株式会社フリーデン商品部長 百井大治

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